特別展「毒」

趣味の部屋

2022年の11月に東京の国立科学博物館で開催された情報を聞いてから、楽しみにしていました。
そして今回、大阪市立自然史博物館行われている同展に行ってきました!

私は小さいころから、虫や動物を捕まえたり観察したりするのが好きでした。
「毒」
と聞いたとき、まず浮かぶのはヘビやハチ、クモなどの有毒生物(毒をもった生き物)です。
生き物が好きな私は、どんな生き物がいるのか、とこれだけでも興味を惹かれました。

今回のこの「毒」展では、生き物のほかにも、日常生活にある花粉やたばこなど、
ヒトを含む生物に害を与える物質を毒と定義して扱っています。
そのため、酸素や塩など、通常では毒とならないものでも、
取りすぎなどによって毒性をもつものであれば「毒」として紹介されていました。

身近にあるさまざまな物が、使い方によって毒になったり薬になったりするということです。
一体、どんなものが「毒」として存在するのか、「毒」が存在する理由はなんなのか。
今回、私が見てきた「毒」展の中身を簡単に紹介できたらと思います。

毒の世界へようこそ

まず紹介されていたのが、生活の中の「毒」についてです。
屋内にあるハウスダストやたばこ、特にたばこは煙だけでなく、
赤ちゃんが誤飲する事故が大変多いため小さな子どもがいる家庭では注意が必要です。

また、ペットとして飼っているイヌやネコにとっては、
ヒトには有毒でないタマネギの皮などが毒となる可能性があるため、
飼育にはそういった知識を持つことが大切です。

毒には、「血液毒」「神経毒」「細胞毒」という3つの区分があります。
毒ヘビに噛まれた、毒きのこを食べた、といったとき、
身体の中でなにが起こっているのでしょう。
それぞれの区分を簡単に説明していきます。

「血液毒」
毒ヘビに噛まれた時、ヘビの牙から血管に毒が注入されます。
その毒が血液を固めて血栓ができます。
血栓ができると血液の流れが止まり、酸素や栄養が運搬できなくなってしまう、というわけです。

「神経毒」
ヒトは活動するために外からの情報を神経細胞という細胞を介して脳に伝えています。
情報を受けた脳は筋肉などに信号を送って反応しますが、神経毒はこの伝達を阻害してしまいます。
筋肉への働きかけだけでなく、臓器への信号が停止すると死につながってしまう、というわけです。

「細胞毒」
毒きのこなどに見られる細胞毒は、有毒成分が正常な細胞に入り込み、
細胞の働き(タンパク質の合成など)をできなくしてしまいます。
そうして細胞が壊死し、最終的には機能が停止する、というわけです。

毒によって正常な機能に障害をきたした症状が引き起こされることを「中毒」といいます。

毒の博物館

ここでは、自然界に存在するさまざまな毒や毒をもった生物の紹介です。
生物が毒をもつ理由は、「攻めるため」「身を守るため」の2つです。
有毒生物やきのこなどが毒をもつのは、
ヒトと同じで次の世代へ生き残っていくためということです。

毒ヘビやハチなどの毒は「攻めるための毒」として獲物を捕らえるために進化してきました。
植物や派手な色をした幼虫などは外敵から「身を守るため」に毒を利用しています。

ここで面白かった実験がジャスティン・シュミット博士によって行われた「シュミット指数」です。
これはどのハチに刺されるのが一番痛いのか、という疑問を実際に刺されて数値化したものです。
身体を張りまくったこの研究は「イグノーベル賞」(人々を笑わせ考えさせた研究)を受賞しました。

毒と進化

自然界の生物には、毒をもって進化し、生き延びてきたものがたくさんいます。
生物としての進化だけでなく、擬態や有毒地帯など環境に適応する進化した例もあります。

「警告色」という幼虫やカエルに見られる鮮やかで毒々しい色は有名な進化です。
生物たちがむやみに互いを傷つけないように、と身に付けていった変化の一つ。
自然界には私たちが意識しないだけで、
生存率をあげるための工夫や進化が至るところに見られるのです。

ここでは少し意外な「柿」の毒を使った繁殖戦略を紹介します。
植物は、繁殖や子孫を残すために種子を動物に運んでもらうという方法をとるものが多くあります。
種子を運んでもらうためには、自身の果実を食べてもらわなければなりません。
しかし、食べられる目的は「種子を運んでもらうこと」なので、
種子が未熟な状態では意味がありません。
そのため、柿は種子が熟すまでの間、
果実にタンニンという物質を凝縮させて食べられるのを防ぎます。
私たちが食べる黄色っぽくなるときが種子が熟したタイミングということです。

自分で動くことができない植物でも、子孫を残すために「毒」を用いた戦略を用いるわけです。

毒と人間

画像は日本人の多くが恐れる「スギ花粉」です。
花粉症もアレルギー反応という一種の中毒反応ですが人によって差があります。
これだけでなく、お酒によるアルコール中毒なども、人の生活に潜む「毒」の一種でしょう。

古くから、毒と人の関係は、狩りや戦争に使われることで変化してきました。
北海道に住むアイヌ民族が弓矢などの先端に毒を塗って狩りをしたり、
戦争で毒ガス兵器を使用したりと良くも悪くも、毒と人の生活は密接にかかわってきたわけです。
生物がもつ自然の毒でなく、人は化学を駆使して毒を製造・使用してきました。

戦争で使われる兵器はなくなってほしいものですが、殺虫剤や血清といった薬のように、
人が生き延びるために研究されてきた毒もあるのです。

毒とはうまくつきあおう

「毒」
と聞いたときのイメージが少し変わったのではないでしょうか。
毒は一概に悪いものではなく、生物たちにとっては自分たちが生き延びるために必要なものであり、
人にとっても使い方や使用量によっては生活する上で、なくてはならないものなのです。


かつては工業用の素材として使用されていた「アスベスト」も毒性があるとわかるまでは、
人の生活を便利にするから使用されていたわけです。
いま身近に使われている物や素材に毒性がある、と後々になって明らかになるかもしれません。
しかし、毒性の有無にかかわらず、毒と人の生活は切っても切れないものとなっているわけです。

この記事で紹介したのは、特別展「毒」の一部でしたが、
内容が非常におもしろく、身の回りのものにもっと興味を持てるようになりました。

ここまで読んでくださった方にも、少しでも興味をもって頂けたら幸いです。

ではでは。

※グッズ売り場で購入した「図録」と「下敷き」です。どちらもデザインがすばらしい。
 ここで使用した写真は図録から引用させていただいたものもあります。

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